【FP3級】所得税-事業所得、給与所得、退職所得
今回の学習
今回は所得税計算の流れのうち、最初に所得を分類する必要があるため、いくつか所得の分類を見ていきましょう。
- 所得を10種類に分類する
- 各所得の損益を通算して(損益通算)、前年から繰り越された損失を控除する
- 総合課税と分離課税に分ける
- 総合所得から所得控除を差し引く
- 所得に税率を乗じて納税額を算出
- 総合所得:累進課税制度(一定の所得を越えた分は税率が高くなる)
- 分離課税:一定の税率(上場株式等20.315%(所得税15%))
- 算出した納税額から税額控除を差し引く
事業所得
事業所得の内容
事業所得とは、個人事業主の方が稼いだ所得です。不動産所得となる不動産以外の飲食業、小売業、サービス業などが事業所得に該当します。
事業所得の金額
事業所得=総収入金額-必要経費-青色申告特別控除額
不動産所得と同じ
総収入金額と必要経費
総収入金額とは
1月1日から12月31日までに役務を提供して稼いだ金額であり、現金収入額ではありません。
例えば、個人で飲食店を営んでいる場合に、12月にお客様がクレジットカードで支払い、カード会社から翌年2月に預金に振り込まれた時は、役務を提供した12月に総収入金額を認識します
必要経費とは
- 商品売買の原価(売上原価)
- 従業員への給与
- 減価償却費など
減価償却費について
建物や機械などの有形固定資産は毎年経年劣化しますが、いくら劣化するかを一定の方法で算出することを減価償却と呼びます。減価償却の方法には定額法と定率法の2つがあります。なお、土地は減価しないため、減価償却は行いません。
定額法は資産の価値が毎年同じ金額だけ減価していく方法です。
定率法は資産の価値が最初の方が大きく減価していく方法です。
建物、建物付属設備、構築物は定額法を使用します。その他の車両、機械、備品などの資産は定額法か定率法か選択することができますが、税務署にどちらか選択する届出書を提出しない場合は、定額法を採用するものとみなされます。
また、有形固定資産のうち使用年数(耐用年数)1年未満のものや取得価額10万円未満の少額資産は減価償却を行わずに、取得日に全額が必要経費となります。
事業所得の課税方法
事業所得の課税方法は総合課税です。そのため、累進課税となり、所得が大きければ納税額が大きくなります。
- 答え
-
×:減価償却方法の届出を行わない場合は定額法が採用されます。
給与所得
給与所得の内容
給与所得とは、勤務先から会社員、アルバイト、パートタイマー等の方が受け取る給与、賞与等の金額です。ただし、月15万円までの通勤手当や出張旅費は非課税です。
給与所得の金額
給与所得=収入金額-給与所得控除額
給与所得控除額
給与所得控除額とは、給与所得は、事業所得などのように必要経費を差し引くことができない代わりに所得税法で定めた給与所得控除額を給与等の収入金額から差し引くことができます。
汗水流して稼ぐ給与所得は他の所得より優遇するための制度です
給与の収入金額 | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
162.5万円以下 | 55万円 | |
162.5万円超 | 180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 |
180万円超 | 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超 | 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超 | 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
給与所得控除額は最低85万円、850万円超は上限195万円であることを覚えましょう。
例えば、年収500万円の会社員の方の給与所得は、
①収入金額500万円
②給与所得控除額500万円×20%+44万円=144万円
③給与所得 ①500万円-②144万円=356万円
所得金額調整控除
所得金額調整控除とは、給与所得控除額は上限195万円となっているため、税制改正によって税負担が大きくなった、子供や介護者がいる一部世帯と、年金を受給しながら給与所得のある世帯のための所得控除です。
所得金額調整控除=(給与等収入金額(上限1,000万円)-850万円)×10%
- 適用される条件
- ①給与収入が850万円超
- ②いずれかに該当する
- 本人が特別障がい者である
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障がい者である同一生計配偶者または扶養親族を有する
課税方法
給与所得の課税方法は総合課税です。そのため、累進課税となり、所得が大きければ納税額が大きくなります。
確定申告
毎月の給与支払い時に税金が源泉所得され(天引き)、会社側が年末調整を行うことで従業員の方は基本的に確定申告は不要です。ただし、以下の場合は確定申告が必要となります。
- 確定申告が必要な給与所得者
- 年収2,000万円超
- 給与所得、退職所得以外の所得が年間20万円超ある人
- 複数の会社から給与を受けている人
- 答え
-
×:通勤費は月額15万円まで非課税です。
- 答え
-
×:以下に該当する人は確定申告が必要です。
・年収2,000万円超
・退職所得以外の所得が年間20万円超ある人
・複数の会社から給与を受けている人
退職所得
退職所得の内容
退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得です。通常、退職金は会社で長い期間、務めた対価として支給を受ける金額であるため、10種類の所得のうち1番課税所得が優遇されるように計算されます。
退職所得の金額
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)÷2
退職所得の計算では、収入金額から退職所得控除額を差し引け、さらに金額を÷2することで所得を小さくすることができるため、所得税の金額負担を下げることができます
退職所得控除額
退職所得控除額
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤務年数 |
20年超 | 800万円(40万円×20年)+70万円×(勤務年数-20年) |
例えば、勤務期間25年3か月で、退職金が1,800万円である人の退職所得は、
①勤務期間26年(1年未満は切り上げ)
②退職所得控除額 800万円(40万円×20年)+70万円(26年-20年)=1,220万円
③退職所得 (1,800万円-1,220万円)÷2=290万円
特定役員退職手当等に係る退職所得
役員等勤続年数が5年以下である者が退職手当を受け取った場合は、退職所得の計算で1/2は掛けないで算出します。
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)
短期退職手当等に係る退職所得
役員等以外の従業員が勤務期間5年以下で退職した場合に「収入金額-退職所得控除額」の金額が300万円超の場合は2分の1をかけないで計算します。
- 「収入金額-退職所得控除額」の金額が300万円以下
- 退職所得=(収入金額-退職所得控除額)÷2
- 「収入金額-退職所得控除額」の金額が300万円超
- 退職所得=150万円+(収入金額-(300万円+退職所得控除額))
- 上記は300万円以下は÷2をした150万円、300万円超の部分は÷2をしません
退職所得の課税方法
退職所得の課税方法は分離課税(他の所得と合算しないで税額を計算する)です。
退職所得の受給に関する申告書を提出した場合
退職所得の受給に関する申告書を提出した場合は適正な税額が源泉徴収されるため、勤務者は確定申告は不要です。
退職所得の受給に関する申告書を提出しない場合
退職所得の受給に関する申告書を提出しない場合は、退職金の収入金額に一律20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%)の源泉徴収が行われ、自身で確定申告を行って、適切な税額との差額を納付又は還付を受けることになります。
- 答え
-
×:退職所得控除額の算定は勤続年数が20年超であれば800万円+70万円×(勤務期間-20年)で算出であるが、勤続年数が1年未満の端数は1年に切り上げて計算します。例えば、勤務期間25年3か月であれば、退職所得控除額を算定する勤続年数は1年未満を切り上げて26年となります。